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【記者・プレスリリースエバンジェリスト】学校の中の当たり前を社会の意味に変える

記者・プレスリリースエバンジェリスト|株式会社プラスターHR代表取締役/加星 宙麿氏

 社会に広く学校を発信するとき、どんな切り口なら届くのでしょうか。その問いに答えてくれるのが、18年半で約6,800本の記事を執筆し、教育行政や学校現場も継続的に取材してきた元地方紙デスクの加星宙麿氏です。
 本稿では、学校の中からの視点と社会から学校を見る視点をどう重ね、発信をどう組み立てるのか、その考え方をお伝えします。

学校には、発信すべき価値がすでにある

 教育行政や学校現場を継続的に取材する中で、一貫して感じてきたのは、学校には発信すべき価値が圧倒的に多いということです。学校広報で最初に立てるべき問いは、「自分たちの行動すべてに、発信価値があるのではないか?」この前提に立てるかどうかです。特別なイベントや受賞実績だけでなく、日々の指導や問いかけ、伴走も社会にとって意味のある情報になり得ます。
 学校の現場には、すでに価値があります。ただし全部は出せません。量が膨大になるからです。だからこそ必要なのは、取捨選択の基準です。私が最も重視している中のひとつが社会視点です。

社会が知りたいのは、実績だけではない

 進学実績や就職実績は、どの学校でも発信されています。もちろん重要です。ただ、社会が知りたいのは数字だけではありません。知りたいのは、その学校で子どもたちがどんな環境で学び、どんな指導を受けて、どう変化していくのかということです。つまり、緒果だけでなく育ち方です。
 学校広報では、進学実績や就職実績、行事は比較的発信されてきました。一方で、教師の指導方法は、まだ十分に可視化されていない領域です。先生方は、単に教科を教えるだけではありません。子どもの成長段階を見極め、学習意欲を引き出し、学力面にとどまらない力を育てています。そこには、専門職として蓄積された実践知があります。
 この指導の専門性を社会に伝えることは、学校理解を深めるだけでなく、地域や家庭を含めた学びの質の向上にもつながります。だからこそ、学校の中にある価値を、社会から見ても意味のある情報として整理していくことが大切です。

時事性と希少性が、学校を社会に開く

 学校からの発信は、社会の節目や課題とつながったとき、情報としての価値が高まります。ここで鍵になるのが時事性希少性です。
 まず時事性です。大切なのは、いま社会で何が注目されているかを踏まえて、学びの意味を言語化することです。たとえば、長崎の軍艦島が 2024年に閉山50周年を迎えた際、大阪の学校が軍艦島を探究学習の題材にした取り組みが長崎でニュー スになりました。社会の節目と学びが結びついていると、発信に時事性が生まれます。
 次に希少性です。学校全体の方針を並べるだけでは、他校との差は伝わりにくいのが実情です。たとえば、探究発表の受賞や部活動での上位入賞を伝える場合も、結果の大きさだけでは十分ではありません。本当に伝えるべきなのは、どんな指導法で、どんな試行錯誤を重ね、その過程で生徒にどんな変化が起きたのかというプロセスです。つまり、生徒の個性が先生の指導によってどう伸び、社会につながる力ヘ育っていったか。そこまで示してこそ、その学校ならではの希少性が立ち上が ります。
 こうして学びの過程と社会との接点が言語化されたとき、それらの学びは学校内の活動にとどまらず、社会に開かれた価値として伝わってい きます。

目標から逆算する広報が、学校の求心力をつくる

 広報では、まず目標設定が欠かせません。そのうえで最初に問うべきは何のために発信するのかです。広報であれば、わかりやすい目的の一つは志願者を増やすことです。だからこそ、目標に向かう道筋を外部にも見える形で示していく必要があります。

 記者時代の取材先に、発信が非常にうまい先生がいました。その先生が優れていたのは、成果を並べることではなく、学校がどこを目指し、そのために何を実践しているのかを、外部にも見えるようにしていたことです。進学実績、スポーツでの成果、学校行事なども発信していましたが、それらを単発の話題として扱うのではなく、学校の方針や特 色を伝える材料として位置づけながら発信していました。その結果、学校の取り組みが社会にも伝わり、学校の目指す姿や選ばれる理由が少しずつ共有され、生徒が集まる学校へと変わっていきました。これは単発の話題づくりではなく、方向性のあるブランドを育て、求心力を高めた成果です。
 進学実績やクラブ、行事といった発信もそれ自体を伝えるだけではなく、学校が何を目指し、そのために何を実践しているのかという文脈に紐づけることで、発信の届き方が変わったという事例です。

学校の日常を、社会の言葉に翻訳する

 私は、記者として選ぶ側、発信支援者として伝える側の両方を経験してきました。その立場から言えるのは、学校の日常に埋もれている価値を見出し、社会の言葉に翻訳していくことの大切さです。学校の現場にはすでに価値があります。
 大切なのは、その価値を社会の視点で捉え直し、時事性や希少性も踏まえながら、何をどう伝えるかを見極めることです。そして、目標の文脈に沿って学校の取り組みを外部にも見える形で届けていくことです。
 学校の中の当たり前を、社会の意味へ。そうした発信の積み重ねが、 学校の姿を社会に伝え、これからの学校広報の力になっていくのだと思います。
 より良い社会づくりに向けて、ぜひ積極的に情報を発信していただきたいと思います。

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