【NEWS】学校広報専門誌「図画広報」Vol.3発行 ▶︎

【放送作家】相手に届く広報は どう考えられるのか

 複雑で難しいことを、いかにわかりやすく、興昧深く届けるか。
 その問いに放送の現場で長年向き合ってきたのが、テレビ・ラジオ番組の構成とリサーチに携わってきた放送作家の米原昌宏(まいばら まさひろ)氏です。関わった番組は350本以上。放送の現場で何百パターンも試しながら磨いてきた考え方を、学校広報の視点からひもときます。

放送作家|有限会社仕事場取締役社長/米原昌宏氏

大前提は、わかりやすさと興味深さ

 学校の魅力を伝える場面では、どれも大事なことばかりです。だからこそ、何をどう見せるかが問われます。
 放送の現場で大前提だったのは、すでに関心のある人にも、まだ関心の高くない人にも、難しいことをいかにわかりやすく、しかも興味深く伝えるかということです。事実を話すだけでは伝わらないものをどう構成するか。これが長年向き合ってきたことでした。
 放送業界では、こうした考え方はすでに共有されていたため、伝えるための土台はスタート時点で3〜4割は成立していました。一方で、企業動画の制作やイベント集客の依頼などに関わる中で、こうした伝えるための考え方が、まだ十分に共有されていないことも感じました。
 今は、学校や個人でもSNSなどのメディアを扱う時代です。これまでは放送局だけにあったものが、広く必要になってきたのだと思います。

何を話すかの前に、その場の空気を決める

 私がコンテンツ制作やイベントなどで、最初に考えるのは、「ノリを伝える」ことです。テレピで言う『ON AIR』です。たとえば、学校説明会ではどんな空気を届けたいのか、その場の空気に聞き手がどう入ってこられるようにするのか。そこを最初に整えることが大事です。
 私は、高校や大学、専門学校などで、メデイアで伝えるための企画・立案・台本作成などの講義も行っています。講義では、まずその日の流れを黒板に書きます。今日は何を話すのかを先に示し、そのうえで「ここは集中して聞いてください」と伝える。それだけで、聞き手は安心して 話を聞けるようになり、理解も深まります。本にも目次があるように、最初に流れが見えるだけで、受け取り方は変わるんです。ノリとはそういうことだと思うんです。ここが曖昧だと、情報が正しくても、何を伝えたいのかが届きにくくなります。

わかりやすさと興味深さは、どう組み立てるか

 わかりやすさをつくるには、別の世界の話にしないことが大事です。私が20年ほど台本を書いている鳥人間コンテストでも、そのことを考えてきました。そこには、東京大学や京都大学、早稲田大学など、難関大学の理系学生が多く出場しています。話を聞くと、やはり専門的な言葉が出てきます。迎角やアスペクト比といった専門用語です。これをそのままテレビで放送しても、見ている人には別の世界の話で終わってしまいます。そこでインタビューのときは、飛行機の専門知識がゼロの人にもわかるように話してくださいとお願いしています。そうすると、みんな工夫してくれて、「こうすればバランスが良いから安心して飛べる」といった言い方にしてくれるんです。それだけで、一気にわかりやすくなります。
 大事なのは、自分たちとは関係のない話ではなく、入っていける話に変える。そこに、わかりやすさがあります。同時に、興味深く受け取ってもらうには、共感を得られるようにすることも大事です。たとえば、この番組の競技者はみんな本当に泣くんです。1年かけて準備しても、挑戦できるのはその1回だけだからです。

 ただ、視聴者からすると、飛距離が出た出なかったという結果で、なぜそこまで一喜一憂して泣くのかがわからない。そこで私は、『飛ばなきゃならない訳がある』というサブテーマを掲げました。そしてインタビューで、「飛ばなきゃならない訳はなんですか?」と聞くんです。すると、「支えてくれたおじいちゃん、おばあちゃんのためです」「設計図を書いてくれた田中くんのためです」といった話が返ってくる。そうする と、見ている人も感情を重ねやすくなる。ここで初めて共感してもらえるんです。

印象に残る流れをどうつくるか

 学校には、伝えたい魅力がたくさんあると思います。たとえば学校説明会では、カリキュラムや進学実績、国際交流など、どれも丁寧に伝えたい内容ばかりです。大事なことだからこそ、順番に説明していく形になりやすい。
 ただ、保護者や受験生の側からすると、それらを1から順番に聞いていくと、途中で理解が追いつかなくなることがあります。ここで大事にしたいのが、順番通りではなく、インバクト順に並べ替えることです。たとえば、伝えたいことが10あったとしても、1· 2·3·4と順番に並べるのではなく、起承転結で言えば転から伝える。先生方の日常の中で、印象に残る出来事があれば、それを先に持ってくる。そのあとで、必要なことを伝えていく。
 そして最後は、先生や生徒など当事者の感想でまとめるのがいいと 思います。共感も得られますし、言葉にも実感がでると思います。
 こうして、学校の中にある出来事や思いを、相手に伝わるように構成 することが大事です。学校の中の価値は、わかりやすく、興味深く伝えられてこそ、相手に届く価値になるのだと思います。

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