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【SNS講師】届けたいのは実感 SNSで考える学校広報

SNS講師|ComRipple代表/藤原 忍氏

 学校広報でSNSを活用する中で、何をどのように届ければよいのか。そうした問いは多くの現場に共通するものです。そこに答えてくれるのが、企業向けにSNS運用研修を行うほか、大学や専門学校でもSNS講師を務める藤原忍氏です。
 学校の中にある日常や価値を、受験生や保護者に伝わる形へどう置き換えていくのか。学校広報に活かせるSNS運用をお届けします。

発信の前に、相手を知る

 SNSを活用する上で最初にやるべきことは、相手理解です。私はよく、「相手の言語と文化を先に知る」とお伝えしています。学校の中で当たり前に使っている言葉が、外では通じないことは珍しくありません。
 学校の中ではよく知られている行事や日常の出来事も、受験生や保護者にとっては初めて触れるものです。だからこそ、学校の中で共有されていることを、そのまま発信するだけでは十分ではありません。相手が理解できる言葉に置き換えて、見える形で渡していくことが必要です。
 もうひとつ大事なのが、何のためにSNSをするのか、誰に届けるためのものなのかを、しっかりと考えてから始めることです。まわりがやっているから始めるでは成果につながりにくいと思います。誰に何を届けたいのか。ここが決まって初めて使うSNSが決まります。保護者への到達を狙うのか、受験生に学校生活のイメージを持ってもらうのか、地域や企業に学校の取り組みを知ってもらうのか。目的が違えば、投稿する内容も評価の指標も変わります。

SNSは、学校で過ごす実感を伝えられる

 SNSの強みは体験を伝えられること。つまり、学校で過ごす実感を先に伝えられることです。たとえば、先生との会話や友達とのやりとり、その日の空気感や表情。今その場に流れている雰囲気を伝えてくれます。とくにショート動画は、こうした日々の場面を切り取りながら継続して届けやすいため、普段は見えにくい学校の日常がそのまま届きます。そうした発信が積み重なることで、見る側に没入感が生まれて、「この学校に行くと、こんな時間を過ごせるんだ」と感じてもらいやすくなるのです。
 まだ学校に来たことがない受験生や保護者に、行った気分になってもらえるかどうか。ここが、SNS運用の大きな役割だと考えています。 SNSはもともと、コミュニケーションのための場です。だからこそ、日々の小さな出来事や会話の断片、学校の温度感を連続して届けることに向いています。
 それは動画に限りません。たとえばXのようなテキスト中心のSNSでも、リアルタイムでその日の出来事や空気を伝えることができます。パンフレットやWebサイトが、教育方針やコース内容、進路実績といった整理された情報をきちんと伝えるものだとすれば、SNSは学校で過ごす時間の実感を体験してもらえるものです。
 この役割の違いを意識することが、学校広報におけるSNS活用の出発点だと思います。lnstagramでもキャプションに必要な情報をきちんと入れる。読まれない前提で短くするのではなく、必要な人に届く前提で丁寧に書く。同じ文面のコピー&ペーストを避け、投稿ごとに受け手の疑問に答える。こういった積み重ねが成果を生むと考えています。

告知に、安心につながる情報を添える

 学校のSNS投稿でよく見かけるのが、告知だけで済ませているケースです。もちろん告知は必要です。でも私は、目安として告知2割、体験8割と考えています。たとえば、オープンキャンパス開催の投稿です。日時や申込URLは情報としては正しいかもしれませんが、それだけでは、初めて参加する受験生や保護者の不安はなかなか取り除けません。だからこそ、昨年参加した人の声や受付の場所、どんな服装の人が多いかといったような情報を添えることが大切です。
 そうした情報があることで、SNSを見ている時に手を止めてもらいやすくなり、オープンキャンパスに参加することを具体的にイメージしてもらえると思います。また、学内では通じる行事名や略語も、学外の人が見たときにわかりやすい言葉に置き換える必要があります。たとえば、『〇〇祭』と書いても、学外の人には文化祭なのか、スポーツイベントなのか、どんな規模なのかが伝わりにくいことがあります。生徒にとっては当たり前のことでも、受験生や保護者にとっては初めてのことです。
 受験生の不安は、自分はここで、どんな毎日を送るのか。保護者の不安は、うちの子を、この学校は丁寧に見てくれるのか。こういった不安を取り除いていくことが必要です。

見えやすい数字と、実際の手応えは一致しない

 学校広報では、フォロワー数の解釈にも注意が必要です。地域密着の学校で遠方のフォロワーが増えても、志願者に直結しないことがあります。逆に、数字が伸びていなくても、来校時に受験生や保護者から「SNSを見ていました」という反応をいただいたりすることは少なくありません。学校アカウントをフォローすると趣味嗜好が見えてしまうことを避けて、フォローせずに閲覧している人もいます。もちろん、フォロワーなどの数字を定期的に確認することは大切です。ただ、どの数字を見るべきかは、何を目的に運用しているかによって変わります。大切なのは、見えやすい数字だけを見るのではなく、実際の手応えとあわせて考えることです。数字として見えやすいものと、 実際の手応えは一致しないことがあります。そうした前提で運用していくことが、学校広報では必要だと思います。
 学校広報に必要なのは、伝わる体験を積み上げることです。その積み上げが、学校選びの安心と納得につながっていくと私は考えています。

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