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【嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学|事例紹介】定員未充足からの挑戦 大学リブランディングで見えた新たな道

直近10年間で志願者数4倍へ、ビジュアル戦略とブランドイメージの再構築で得た成果

再生の第一歩、志願者数低迷の原因を探る

 本学は、大学と短期大学が同じキャンパスにある美術大学で、京都嵐山の風光明媚な地に位置しており、1971年の開学以来、嵯峨美(サガビ)の愛称で広く親しまれてきました。私がこの大学に着任したのは2013年のこと。当時、大学と短大のどちらも定員を下回る状況が続いていました。
 そこで、まずは志願者数や入学者数が低迷している原因の分析から着手することにしました。

※嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学 入学広報グループ事務部長 松本 昇氏

知名度低迷の背景にあったもの

 志願者数や入学者数低迷の原因として、さまざまな要因が考えられましたが、その一つに本学の知名度が低かったことが挙げられます。私が着任した当時、大学案内(資料)請求者数は少なかったですし、オープンキャンパスを開催しても来場者数が少ないために、学内が寂しい雰囲気になるという悪循環に陥っていました。そこでまず、知名度が低い要因として、校名の変更があるのではないかという仮説を立てました。                       

 1971年の開学当初は嵯峨美術短期大学の名称でスタートし、嵯峨美(サガビ)の愛称で広く親しまれていましたが、2001年に4年制大学を開学した際、京都嵯峨芸術大学および京都嵯峨芸術大学短期大学部へと校名が変更されたことで、それまで親しまれていた嵯峨美(サガビ)の愛称が次第に薄れてしまったのではないかと考えました。

ビジュアルの統一による、一貫したブランドイメージの訴求

 大学の魅力を訴求するための広報物、例えば大学案内やポスター、Webサイトなどにおいて、イメージビジュアルが統一されていなかったことも一因として考えられました。当時、学生募集を担当する専門の部署がなく、各先生方が手探りで広報ツールを作成していたため、大学全体としての一貫したブランドイメージを発信することができていなかったのです。

 確かに校名変更による知名度の低下に起因する見方はありましたが、単に名称の問題だけではなく、大学の専門性を視覚的にどう伝えるかが鍵だと考えました。そこで、美術大学としての専門性を明確に打ち出すために、本学ならではの美大らしいビジュアルと「美の術で生きていく。」というキャッチコピーを作成しました。特に、日本画や油画といったファインアートに焦点を当てたイメージビジュアルを積極的に使用し、美術大学としての専門性を強調しました。 

 これらの対策により、大学の独自性や専門性が一貫して強調されるようになり、受験生や保護者にその魅力を効果的に訴求することが可能となりました。

強みの再発見、見逃せない真の魅力

 本学は以前から、京都・嵐山という世界的観光地で学べる立地環境や、1,100年以上の歴史を誇る大覚寺をバックボーンに持つ点をPRしてきました。しかし、私が見た本学には、それら以上に多くの魅力が存在していたため、これらも積極的に訴求すべきだと考えました。少人数制の指導体制をとり、学生一人ひとりの制作スペースが十分に確保されていることや、交通アクセスも非常に良好で、JR線、阪急線、嵐電の3つの鉄道の最寄駅から徒歩圏にあり、大阪から最も近い京都の美術大学でもあります。

 また、博物館やギャラリー、13万冊の専門書を所蔵する図書館など、美術を学ぶ上での恵まれた環境も大きな魅力です。これらの訴求ポイントは、受験生や保護者の視点に立つことで、自然と浮かび上がってきました。

ビジュアル戦略に加え、直接接触を重視

 大学の訴求ポイントを明確に掲げ、統一されたイメージビジュアルやキャッチコピーを用いた視覚的PRにつとめながら、受験生や保護者、高校教員に直接接触できる進学ガイダンスや高校訪問にも積極的に取り組みました。また、オープンキャンパスに加えて、体験入学や制作展見学など、異なる形態の受験生イベントも追加して、受験生一人ひとりに丁寧に対応し、満足して帰っていただくことを徹底しました。さらに、これらの接点で得た信頼を維持するため、本学のイベント参加者や資料請求者には、ビジュアルのクオリティにこだわった大学案内やイベントフライヤーを送り続けました。

 これにより、美術大学としてのブランドイメージが強化され、本学の魅力を最大限に伝えることができたのだと思います。

リブランディングで実現した志願者数の増加

 2017年に校名を嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学に変更(短大は開学当時の校名が復活)したことで、関西で唯一、美術大学を名乗ることができました。これにより、嵯峨美(サガビ)の愛称は再び受験生や保護者の間で親しまれ、広く浸透しています。着任後の3年間、原因分析から始まり、イメージビジュアルの統一や魅力の再発見などを通じて、徐々に本学の魅力が再認識されるようになりました。

 その結果、大学・短期大学ともに志願者数は増え続け、大学は2016年、短大は2017年に定員を数年ぶりに充足しました。以降、現在に至るまで志願者数は増え続け、入試倍率は年々上がり続けています。

 統一されたビジュアルとキャッチコピーの重要性は、単なるデザインの一貫性にとどまらず、大学のブランド力を構築し、継続的に訴求し続けるための基盤となることを実感しました。ビジュアル戦略をはじめとするリブランディングにより、嵯峨美(サガビ)のブランドイメージが強化され、志願者数増加に繋がったのだと思います。

編集部より

美大の「ビジュアル戦略」が見事に活きた事例。
「学校の真の魅力を再発見し、どう伝えるか」を見直すことで、ブランドはよみがえります。

ポイント

  • 校名や愛称がブランドに与える影響は小さくない
  • 視覚の統一とコピーで「らしさ」を見せる
  • 小さな接点(DMやイベント)も丁寧に積み重ねる

目次