ディズニーUS公式イラストレーター|グラフィックアーティスト/カズ・オオモリ氏
ディズニー&マーベルスタジオ公認アーティストとして、大阪を拠点に、世界のエンターテインメント分野で活動するカズ・オオモリ氏。映画のポスターやチケットのアートワーク、ディズニーホテルの壁画ワークなどを手がけるほか、大学でも教鞭を執っている。今回の取材では、カズ・オオモリ氏のアトリエにお邪魔して話を伺った。作品そのものだけでなく、それがどこに置かれ、見る人にどのような体験をもたらすのかを起点に表現を組み立てる。その視点は、学校広報を考えるうえでも多くのヒントがあった。
何を描くかの前に、どこで見られるかを考える
カズ・オオモリ氏は、表現を考えるときの出発点は、まず、何を描くかではないと話す。
「まず、自分の描く絵がどこに飾られるのかを見ます。そこを訪れた人がどんな動線でその場所を通るのか、どういうライティングの中で見られるのかも確認します。そこでどんな体験をするのかを先に把握してから、何をどう描くかを考えるんです」
実際の仕事は、映画のポスターやチケット、ディズニーホテルの壁画ワークなど、使われる場所も役割もさまざまだ。
「ディズニーやマーベルの仕事は、やっぱりファンに向けているんです。ファンの人って、コレクターでもあるんですよね。だから、そこにどう希少価値を付け加えられるかを考えます。なんとかして入手したい、と思ってもらえるかどうか。そこは大事ですね」
さらに、カズ・オオモリ氏はこう続ける。
「僕が一番のファンであることも大事だと思っています。自分が見たい、自分が欲しいと思えるかどうか。そういう感覚がないと届かない。だから、『ありそうでなかった』を表現したいんです」
何をつくるかだけではなく、どこで見られ、誰に届き、どう感じてもらうか。カズ・オオモリ氏の表現は、そんなところから組み立てられているように感じた。

広報もまた、どこで、誰に届くのかを考える
この考え方は、広報にもそのまま重なる。
「大学案内やWebサイト、オープンキャンパスの配布物も、どこで、誰が、どんな状態でそれに触れるのかによって、見せ方も伝え方も変わると思うんです」
まだ大学に来たことのない受験生や保護者が初めて目にするのか、オープンキャンパスの後に印象を確かめるために見返すのか。そうした違いによって、伝えるべき内容も変わってくる。
「その上で、受け手にとって重要なのは、自分にとって何が得られるかが見えることだと思います」
たとえば施設や環境を伝える場合でも、「図書館があります」「アクセスが良いです」という案内をそのまま載せるのではなく、実際に学生がどう感じているのかを言葉にしていくことが大切だと話す。
「『自分の居場所がある』『ここの図書館に行けば落ち着いて考えられる』『移動の負担が少ないから学びや活動に集中できる』。そういうのって、実際に学生から聞く言葉なんです。そういうふうに伝わると、受験生は大学生活を具体的に想像できるようになると思います」
どこで、誰に届くのかを考えることと、その人にとって何が得られるのかを見えるようにすること。その両方が重なって、伝わる広報になっていく。
おしゃれだけでは、期待を裏切ることもある
見た目だけを整えることへの違和感についても、カズ・オオモリ氏は率直だった。
「広報物はおしゃれなのに、実際に大学に来たときにそうでもなかった、というズレは期待を裏切ってしまいますよね」
だからこそ大切なのは、在学中の学生の声を、広報の中でどう形にしていくかだという。
「そのヒントになるのが、在学生の声だと思うんです。日々その大学で過ごしている学生が、どこに居心地のよさを感じているのか、何に意味を見いだしているのか。そこに、外からは見えにくい大学の姿があると思います。そういう声を聞いて、具現化していくと、リアリティのあるものがつくれると思います」
ときにはネガティブに見える意見もあるかもしれない。ただ、それをそのまま弱みとして扱うのではなく、別の価値としてどう捉え直せるか。そうした読み替えも広報に必要な視点だと話す。
面接で見える、何に惹かれて来るのか
カズ・オオモリ氏は、大学で教鞭を執るだけでなく、面接官として受験生に向き合う立場にもある。面接の場では、大学の学びについて伝えることもあるという。
「学年を超えて社会課題を捉えるプロジェクトに取り組んでいます、と話すんです。そうすると、そういったことに魅力を感じる学生が集まってくるんですよね」
そうした中身をわかったうえで入学してくるからこそ、入学後も「やらされている」感覚ではなく、自分の意思で学びに向かいやすいのだと話す。
心が動く、その手前をつくる
「僕が一番のファンであることも大事だと思っています」「そういう声を聞いて、具現化していくと、リアリティのあるものがつくれると思います」
アトリエで聞いたカズ・オオモリ氏の言葉をたどっていくと、表現も広報も、相手が何を感じるかを想像するところから組み立てられていることが見えてくる。見た目を整えるだけではなく、大学の中にあるリアリティをどう伝わる形にするのか。そこにこそ、心が動くその手前をつくる広報の役割があるのだと思う。

