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【箕面自由学園|事例紹介】「DesignYourself」を軸にした、課題整理から実行までの筋道

学園創立:1926年

園児・児童数:幼稚園212名/小学校229名

生徒数:中学校/288名/高等学校:1962名

(2026年4月現在)

所在地:大阪府豊中市宮山町4丁目21番1号

広報体制:5名(広報室)

 箕面自由学園には、幼小中高を一貫して見渡しながら募集広報を担う広報室がある。今回お話を伺ったのは、 2015年に同学園に着任した広報室長吉永雅和氏。

 広報室がどこに課題を見出し、外に向けて何を前面に出すべきだと定め、具体的な施策としてどう実行につなげていったのか。吉永室長の話を元に、その筋道をできるだけ丁寧にたどる。

学園の教育観を、外に届く言葉ヘ

 学園では10年ほど前から、学園長の掲げる『自分の人生は自分でデザインする』という考え方を大切にしてきました。私たちはその思いを、広報室として外に届く一つの言葉にまとめ、対外的に打ち出すメッセージとして「Design Yourself」を掲げています。学園が大切にしている教育観を、受験生や保護者に伝えるための言葉です。

 パンフレットやホームページの企画も、広報室が中心になって進めます。ただ、こちらだけで完結させるのではなく、現場の先生方の意向や使い勝手、説明の流れを確認しながら内容を詰めて仕上げていきます。校種によって広報体制も異なり、中心を担っていただく先生として小学校は1名、中学校は2名、高等学校は4名配置されています。そうした体制や受験の動きも踏まえながら、パンフレットやホームページの役割を校種ごとに変えています。

 小学校は保護者が意思決定の中心になるため、パンフレットは情報量をしっかり確保しています。中学校のパンフレットは小学校ほど厚くありませんが、その分ホームページを充実させ、受験生が楽しめる応援ページやショートムービーなどを丁寧につくっています。高校は、ページ数のあるパンフレットはあまり読まないのではないかという前提で、説明会や個別相談で説明しやすい8ページのリーフレットにしています。

高校で見えたズレと、広報の立て直し

 広報でいちばん怖いのは、入学後に思っていた学校と違ったというズレが起きることだと考えています。学校の見られ方を、入学後の実態とズレないように伝え、納得して入学してもらう。その前提が崩れると、ロコミにも影響しますし、学校の信頼にも関わります。私たちはまず、このミスマッチを減らすことに努めてきました。実際、何年か前には高校入試でミスマッチが起きていました。ロコミから見えてきたのは、入口の印象と入学後の実態のギャップです。広報として、楽しそうな学校という印象づくりが先行すると、入学後にコースによっては学習量の多さに戸惑い、『そんなに勉強せなあかんのか』という反応が起きてしまう。学校としては学びをしっかり求めますので、ここは広報室として最も避けたいミスマッチでした。

 そこで私たちが取り組んだのは、入学後の姿が誤解なく伝わるように打ち出し方を整え直すことでした。能動的に動く、目標を持って進んでいける、自ら勉強するといった点がきちんと伝わるようにし、そのイメージを具体的に思い描ける卒業生の体験談も厚くしていきました。

受験生のいる場所から、接点を組み立てる

 接点づくりは、受験生がいる場所から考えます。小学校なら幼児教室、中学校なら塾、高校なら公立中学校。そこに向けてより効果的だと思える施策を組み立てています。

 高校では、公立中学校の生徒に届く配布物を用意し、渉外担当が中学校に足を運んで先生方にお渡しし、生徒全員に行き渡る形で届けています。デジタルは見に行く必要がありますが、配布物は手にすれば興味がない状態でも目に入ります。待っていますという施策は届きにくいので、プッシュ型で行動しています。

 Webバナーも活用しています。ただ、いつ出しても成果が出る打ち手だとは捉えていません。実績が弱い時期に出しても、そもそも見てもらいにくいからです。逆に、合格実績など分かりやすい強みがある年は、短期間に絞って出し、知ってもらう、興味を持ってもらう入口として使う。受験生が取りそうな行動と、その年に全面に出せる強みを見極めながら、タイミングも含めて判断しています。

 こうした施策の積み軍ねの結果、数年前には高校で560人の定員に対して2,800人の出願があった年があり、大阪で最も集まったと言われる状況が2年続いた時期がありました。

小学校の課題は、一言で説明できないことだった

 10年ほど前、小学校の募集が厳しく、1クラス18名という時期もありました。とはいえ、教育そのものが弱くなっていたわけではありません。学園が大切にしてきた体験活動や実践的な学びは変わらず受け継がれていましたし、勉強もしっかりやる。その士台や魅力はありました。ただ、広報の見え方としては強みがぼやけ、どっちつかずに映ってしまっていたのです。

 「箕面自由学園小学校ってどんな学校?」と聞かれたときに、 ひと言で言い切れない。第三者が言葉にしづらく、幼児教室の先生も説明しにくい。結果として次の打ち出しも定まらない。この状態が、志願者減の手前で起きていた広報課題だと捉えました。

 今は定員を満たせる状態になっていますが、あの時期を振り返ると、何が伝わっていなかったのか、なぜ第三者がひと言で説明できなかったのかを、見直す必要があると感じていました。

体験を人り口にする説明会へ

 私たちが最初に手をつけたのは、小学校の強みを体験を軸に据えて伝え直すことでした。もともと6年間を通して体系的に組み立ててきた体験活動があったので、体験を起点に学びを深める学校というイメージを打ち出し、その価値がきちんと伝わる入口をつくろうと考えました。

 そこで説明会も、説明する場から園児に体感してもらう場へ寄せました。理科実験を入れたり、縄跳びを一緒にやってみたりと、体を動かしながら楽しめる時間を増やしました。加えて、高校の吹奏楽部やチアリダ一部にも登場してもらい、学年を超えたつながりや学園の雰囲気を感じてもらえるようにしました。こうして私たちが提供したい教育を園児自身が実感できる場として整え、名称も「わくわく体験会」としました。

 ICTやAIなど、デジタルが当たり前になるほど、体験の価値は相対的に高まっていきます。こうした見立ては広報室だけでつくったものではなく、日々子どもたちと向き合う現場の先生にも、同じような感覚がありました。そうした流れの中で、小学校の段階で自分から能動的に動く経験を積み、その土台をつくることが大切だと考えました。自分の目で見て、耳で聞いて、実際にやってみた体験は、次の学びに確実につながります。小学生のうちからそうした経験を重ね、それを言葉にして伝えられるようにする。私たちの広報の方向転換は、ちょうど保護者のニーズの変化とも重なっていきました。

 その考え方は中学校の取り組みにも表れています。たとえば中学校では、年2回のサイエンスフェスタを行い、地元の小学生に来てもらってさまざまな実験に触れてもらいます。特徴的なのは、講師役を中学生自身が担い、自分たちの言葉で説明する点です。回を重ねる中で工夫が積み上がり、中学3年生になる頃には本当に上手くなっていきます。こうした自分でやってみることの大切さを、学園の考え方として見せ続けています。

 このように小中高のストーリーがつながることで、6年・3年・3年を見通して説明できるようになりました。

成果は来校と経路で見る

 成果を見るとき、私たちはどれだけ学校に足を運んでもらえたかを一つの目安にしています。説明会やオープンスクールの参加者数は、試作が届いたかどうかを測るうえで分かりやすい指標になるからです。

 また、小中は受験までの期間が比較的長く、接点をつくれる機会が多いのも特徴です。小学校では、年少さんからイベントで接触し、2年後に入試が控えます。中学校では4年生から参加できるイベントがあり5年生の3学期までに何人来てくれたかが受験者数の見立てにもつながります。そして、来校数を見るだけでなく、どの接点が入試につながったのかという流れまで追いながら、次の判断に活かしています。

 私たちの広報は、学園が大切にしてきた教育観を「Design Yourself」という言葉にまとめ、そこを軸にして組み立ててきました。その軸があるからこそ、校種ごとに魅力の見せ方が散らばらないように整えられるのだと感じています。よく見せるのではなく、良いものをきちんと見せる。その姿勢を前提に、パンフレットやホームページ、接点のつくり方も、その考え方に沿って組み直してきました。

 そして最後は、来校やその後の動きを見ながら、ズレが出ていないかを確かめていく。正しい姿を届けるその積み重ねが、結果として「思っていた学校と違った」というズレを起こしにくくし、学校の信頼につながっていくのだと思います。

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