
開校:1993年
生徒数:中学校451名/高等学校956名 ※2025年4月現在
所在地:和歌山市直川113-2
広報体制:3名
受験者数も偏差値も高めるチームの仕組み。そして、数字の奥にある想い。
少子化が毎年のように進む中、地方の私学にとって生徒募集をめぐる環境は厳しさを増しています。そうした中でも、私たち開智中学校・高等学校は、定員を満たしながら偏差値も高めるという成果を挙げることができています。こうした結果を残せている理由は、全学年で取り組む広報体制と、現場を知っているからこそできる、魂が宿ったコミュニケーションや人と人の関わり方にあると私は考えています。今日はそのあたりをお話しできればと思います。

【広報室長:小笠原 英人氏】
全学年を巻き込んだ、横断型広報チーム
私たちの広報室は、校務分掌上の中心メンバーが3名。そこに、広報室員として14名の教員が加わり、本校や地方で開催する入試説明会などをともに運営しています。さらに、各学年にも1名ずつ広報担当がいて、学校行事に関するホームページの更新などを分担しています。全員が授業や担任業務、部活動の顧問などを担いながら、広報にも関わっているのが特徴です。私自身も、高校2年生の学年主任・副担任・国語の授業・中学男子バレーボール部の顧問を務めつつ、広報室長をしています。だからこそ、発する言葉には現場の温度があり、魂の宿った説明ができる。それが、私たちの強みだと感じています。
プレゼンテーションは、一本の映画
広報活動の大きな柱の一つが、入試説明会のプレゼンテーションです。20代の頃は先輩教員の話し方を真似してみたこともありましたが、どうにもしっくりきませんでした。それ以来、自分の言葉で自分らしく話すようにしました。そうしてからは、説明会が苦ではなくなったどころか、気持ちのこもった説明ができるようになりました。今では、受験生やその保護者に向けた自分のプレゼンテーションの時間が、一本の映画を観ているような感覚になるように意識しています。単に情報を伝えるのではなく、感情や物語性を織り交ぜて、本校入学後の日々がイメージできるよう工夫しています。

受験生に伝えたかったのは、自信
個別相談会では、受験生との距離感が近いため、こちらも受験生に今必要なことを直感的に感じることがあります。あるとき、第一志望は他校の受験生でしたが、現代文が苦手でどうすれば成績が上がるのか相談されたことがありました。そこで、ちょっと自信をつけてあげようという気持ちで、少しだけ現代文の読解法について説明をしてみたんです。後日、その受験生の保護者の方から丁寧なお手紙をいただいたときは、本当に嬉しかったです。本校を受験してほしいという気持ち以上に、目の前の受験生が少しでも幸せになってくれたらという想いで、私はいつも向き合っています。
本校らしさを、一枚のポスターで伝える
私が特にこだわっているのは、ポスターやフライヤーのデザインです。受験生やその保護者が最初に目にする学校の顔であり、イメージを焼きつける媒体だと思っています。ゆえに、どんなに忙しくても、そこは妥協せずにこだわります。普遍性があって、何年経っても本校らしいと感じられるものをめざしています。制作は、信頼できる外部のクリエイターと一緒に進めています。「これで行きましょう」ではなく、「この一枚で本校を語れるか」「今年のテーマに沿っているか」という気持ちでやり取りをしています。最近ではSNSも少しずつ取り入れていますが、ポスターで普遍的な本校らしさを伝えることには、今後もこだわり続けたいと思っています。

2025・2026ポスター
広報とは、何を伝えるかを問い続け、人と向き合い続けること
学校広報において大切なのは、どう伝えるかよりも、何を伝えるのかだと私は感じています。受験の状況は毎年変化しており、今年うまくいった方法が来年も通用するとは限りません。だからこそ、その年その年の状況に応じて、何を伝えるべきかを常に問い続けています。学校がどんな教育をめざし、どんな想いで日々の取り組みを行っているのか。その姿勢をしっかりと伝えられる広報体制、そしてその想いをカタチにできる信頼できるクリエイター。そうしたチームが一体となってこそ、初めて良い結果につながるのだと感じています。そして、広報とは、やっぱり人と人です。受験生やその保護者の方と丁寧に向き合い、「この人が話す学校なら、ちょっと見てみようかな」と思ってもらえること。そのために、日々の当たり前の積み重ねを誠実に続けていくことが、広報の原点であり、本質なのだと思います。

開智中学校・高等学校
広報室 室長
小笠原 英人氏
編集部より
学校として伝えることは「何か」。変わらぬ価値を軸に据えながら、その年の状況を現場から丁寧に読み取り、戦術を微調整する広報を実践。確かな軸と柔軟な対応力が、広報の成果を支えている好事例です。
ポイント
・伝えるべき価値はぶらさず、市場に応じて戦術を柔軟に調整する
・その年の状況に合った「学校らしいメッセージ」を表現する
・数字だけでは読み取れない、現場での肌感覚を広報に活かす