学校のウェブサイトをどう育てていくか。
日々、広報を担う方と向き合う中で、「このページ、ちゃんと見られているのか?」「情報は届けたい人に届いているのか?」といった声をたくさん聞いてきました。限られた時間と人手のなかで、よりよい発信をしたい。でも、どこから手をつければいいのか分からない。そんな声に応えるべく、図画広報ではウェブ広報をテーマとした新たな連載をスタート。
ご登場いただくのは、株式会社ミルズ主任研究員の石井研二氏。
「直帰率」という言葉をWeb業界に広め、アクセス解析の第一人者として知られる石井氏は、ただデータを読み解くだけではなく、「経営視点でWebを見る」という観点で多くの企業・団体の広報に関わってこられました。
この連載では、そんな石井氏とともに、学校のウェブ広報を「どう見るか」「どう育てるか」をテーマに、月に1・2回のペースで、実践的な視点からお届けしていきます。
『数字が見えると、広報が変わる。』
そんな連載になればと願いを込めています。どうぞお楽しみに!
【第1回】毎月何人がホームページを見に来るか? 「最適な集客数」は何人だろう
ホームページに「集客目標」を
私立中学・高校や大学、専門学校などにお伺いして、「御校のホームページは毎月何人が見に来ていますか?」と質問すると、ぱっと答えが返ってきません。
「何人か分からない」「えっと、制作会社からレポートをもらっていたはずだけど…」といった回答が多いです。
これはあまり良い状態とは言えません。単純に数字を把握できていないのではなく、「最初に『何人集めるべきか』を決めていない」からなのです。
何人集めるか目標を立てて、それで集客していたら、「月に○人の計画ですが、まだその80%くらいです」など明確な答えが出せるはずです。

では「何人来てほしいですか?」と質問すると、これもはっきりしません。「できるだけ多く」という答えもありました。
できるだけ多ければ良いと言っても、学校のホームページに毎月1000万人来るとは考えられません。それは無駄な集客であって、「来なくて良い人が来ているだけ」です。ただ検索でヒットしたから見に来ただけの人が何万人来ても、受験してくれるはずはありません。
肝心なのは、「来るべき人」が何人来ているかです。まず、学校ホームページは、どんな人を何人集めるか、目標を立てて作成するようにしてください。
学校のホームページは、「受験生」「その保護者」「受験生の学校の先生」などの受験者関連の他、在校生、近隣の住民など、多様なステークホルダーがあります。それらの人がそれぞれどれだけ訪れているかが、広報として、ブランディングとして、役立つホームページにあるかどうかを決めるのです。
肝心のページを毎月何人見るかを考える
多くの学校サイトで、現在、スマートフォンで検索して訪れる人が最も多く、訪問者の7割近くになっている場合があります。学校名で検索して訪れる人は、この学校の情報が欲しいと思って来てくれるので良いのですが、残念ながら全然関係ない言葉で検索して訪れる人が少なくありません。
学校サイトの検索ワードには、地名も多く含まれます。その地域の情報を探しているだけの人が訪れてしまうのです。交通アクセスのページに出てくるバス路線などを調べて人が来てしまう…。それでは受験するはずがありませんね。
学科名も、比較的多いキーワードです。学科名で来てくれるなら良いのではと思われますが、よくよく調べてみるとまったく別の地域の人だった、ということもあります。大阪の学校で、東京の人が多く訪れるのは、悪いわけではありませんが、受験してくれる率は高くはありません。大学などでは比較的広い範囲から受験者がありますが、中心となるのは近畿圏の人だと思われます。特にオープンキャンパス情報を見て予約するのは、当日移動できる範囲に住む人が中心となるはずです。

まずは、これまでのホームページで、「入試情報」を毎月何人が見ていたか、確認しましょう。「保護者の方へ」が何人、「高校教員の方へ」(大学の場合)が何人と、対象者ごとにコンテンツが分かれていれば、カウントしやすいでしょう。
もっとも「入試情報」を見た人が、みんな今年度の受験者ではありません。2年後に受験する人も、早くから学校を探している場合があります。「入試情報」の中で、オープンキャンパスの情報を見た人は、より現実的に入試先を考えているかもしれません。また、学費や奨学金のページへ移動した人も重視すべきかもしれません。
いくつかのポイントを通過した人数をカウントして、「このページとこのページを見た人は受験生ではないか」「その人数が月100人だから、次年度は150人に増やしたい」という手順で目標数を考えていくと良いでしょう。
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というわけで、「学校ウェブ広報戦略の見方と育て方」の連載がスタートしました。これからも、学校ホームページにまつわる「数字」を織り込みながら、成果の得られるウェブ広報戦略について実践的に書いてまいりますのでご期待ください。
次回はさらに集客目標について深掘り、「このホームページをつくったら何人見に来るかを決めましょう!」をお届けします。