「嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学」のV字回復ストーリー
京都・嵐山にある「サガビ」は、大学・短大ともに定員割れが続いていました。2013年に私が着任してまず取り組んだのは、志願者数が低迷している原因の分析です。 その背景には、2001年に校名が「京都嵯峨芸術大学」および「京都嵯峨芸術大学短期大学部」に変更されたことで、“サガビ”という愛称の印象が薄れ、知名度や来場者数の低下につながったのではないか——そんな仮説を立てました。

※嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学 入学広報グループ事務部長 松本 昇氏
また、当時は広報ビジュアルに統一感がなく、大学全体の専門性が十分に伝わっていない状態。そこで「美の術で生きていく。」というコピーとともに、日本画や油画などの専門性を視覚的に訴求。ビジュアルの一貫性を重視した広報を展開しました。

加えて、嵯峨嵐山という立地、少人数指導、豊富な施設環境など、見落とされていた大学の魅力を再発見し、明確な訴求軸に。ガイダンスや高校訪問、体験イベントなどのリアルな接点づくりも強化し、資料やDMもビジュアルにこだわりました。
その結果、2017年には校名を「嵯峨美術大学」へと再変更。“サガビ”のブランドが再び浸透し、大学・短大ともに定員を充足。現在は志願者数4倍にまで伸び続けています。
課題
- 定員割れが続き、知名度も低迷
- 広報物に統一感がなく、魅力が伝わりにくい
- 校名変更により、親しまれていた“嵯峨美(サガビ)”のブランドが希薄に
取り組み
ビジュアルの一貫性を強化
- キャッチコピー「美の術で生きていく。」を作成
- 日本画・油画など、美術の専門性が伝わる写真選定
- 大学案内やポスター、Webなどを統一デザインに
魅力の言語化と整理
- 少人数制、広い制作スペース、13万冊の図書館
- 嵐山立地の魅力とアクセスの良さ
- 美術を学ぶ環境をわかりやすく言葉に
直接の接点を増やす
- 高校訪問・進学ガイダンスへの参加
- 体験入学・制作展見学など、リアルイベントの拡充
- 資料請求者にビジュアル重視の案内物を継続送付
結果
- 2016年に大学、2017年に短大が定員充足
- 志願者数は増加傾向を維持
- 校名を「嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学」に戻したことで、“サガビ”ブランドが再定着
編集部より
美大の「ビジュアル戦略」が見事に活きた事例。
「学校の真の魅力を再発見し、どう伝えるか」を見直すことで、ブランドはよみがえります。
ポイント
- 校名や愛称がブランドに与える影響は大きい
- 視覚の統一とコピーで“らしさ”を見せる
- 小さな接点(DMやイベント)も丁寧に積み重ねる